原子力災害について

原子力災害

A.原子力災害とは、放射性物質または放射線が、原子力事業者の運転する原子炉等から異常な水準で当該事業所外に放出されること(「原子力緊急事態」という)により、国民の生命、身体、財産に生じる被害のことをいいます。
水害、地震、火災などの一般災害と違い、五感で感じることができないため、どのように行動すればよいか自ら判断できないという特徴があります。

A.まずは落ち着いて、正確な情報を入手しましょう。
原子力事業所で重大な事故等が発生した場合、国、地方公共団体が情報提供を開始します。テレビ、ラジオ、防災無線など通じて発信されますので、情報に従って行動しましょう。
原子力発電所が設置されている地域では、「原子力災害対策重点区域(PAZ/UPZ)」が定められており、区域により避難・退避指示が異なります。

A.福島第一原発事故を踏まえ、原子力発電所の周辺には、原子力災害対策を重点的に実施する区域が定められています。
原子力発電所からおおむね半径5キロ以内の地域を「PAZ(予防的防護措置を準備する区域_Precautionary Action Zone)」、半径5キロ~30キロの地域を「UPZ(緊急防護措置を準備する区域_Urgent Protective action planning Zone)」と呼びます。

原子力災害対策重点区域(PAZ/UPZ)

A.2種類の基準により事態がレベル分けされます。事態がどのレベルにあるかにより、住民への指示内容は変わると考えてください。

(基準1)EAL(緊急時活動レベル_Emergency Action Level)

  • 初期対応段階において用いられる区分。
  • 原子力発電所の状況に応じて分類。原子力事業者が判断。
  • 「警戒事態」、「施設敷地緊急事態」、「全面緊急事態」の3区分に分かれる。

(基準2)OIL(運用上の介入レベル_Operational Inetervention Level)

  • 放射性物質が施設外に放出された場合に用いられる区分。
  • 測定器による測定(緊急時モニタリング)の数値によって分類。
  • 「OIL1」、「OIL4」、「OIL2」、「OIL6」の4つの基準がある。

EALとOILによる対応イメージ

A.原子力災害時、「放射性ヨウ素」という放射性物質が大気中に放出されることがあります。呼吸や飲食で「放射性ヨウ素」を体内に多く取り込むと、甲状腺に多く集まり、数年~十数年後に甲状腺がん等が発生する可能性があります。
「安定ヨウ素剤」は、適切なタイミングで服用すると、「放射性ヨウ素」が甲状腺に集積するのを阻害するはたらきがあるため、地方公共団体から住民に事前配布されたり、学校等で備蓄が行われたりしています。

PAZの住民:事前配布
UPZの住民:服用が必要な場合に配布

A.「安定ヨウ素剤」は、「放射性ヨウ素」にばく露される24時間前からばく露後2時間までの服用が効果的と言われています。
服用回数は、原則1回で、年齢によって服用量が異なります。(以下参照。)
服用指示については、原子力規制委員会がその必要性を判断し、それに基づいて原子力災害対策本部または地方公共団体が住民等に対し服用の指示を出します。伝達方法は、テレビ、ラジオ、インターネット、防災無線や広報車等が利用されます。

13歳以上      :安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム) 丸剤2丸
3歳以上13歳未満    :安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム) 丸剤1丸
生後1か月以上3歳未満:安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム) 内服ゼリー32.5mg
生後1か月未満     :安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム) 内服ゼリー16.3mg

A.「放射性ヨウ素」による内部被ばくの影響(甲状腺がん等)は、年齢が低いほど受けやすいと言われています。そのため、乳幼児を含む未成年者、妊婦及び授乳婦は、優先的に服用すべきとなっています。
また、WHOガイドライン(2017年版)によると、40歳以上の人は、「安定ヨウ素剤」を服用してもその効果をほとんど期待できないとされていますが、40歳以上の妊婦及び授乳婦は、胎児及び乳児への影響を考慮し、優先的に服用すべきとなっています。

A.「汚染」は放射性物質が皮膚や衣服に付着した状態のこと、「被ばく」は放射線を受けることです。

「汚染」は、洗ったりふき取ることで落とすことができますが、汚染に接触すると汚染が拡大してしまいます。そのため、汚染部分を拡大させない対応が必要です。
「被ばく」には、「外部被ばく」と「内部被ばく」があります。「外部被ばく」は、放射線物質から放出される放射線を体の外から浴びること、「内部被ばく」は、吸入や摂食により体内へ取り込んだ放射性物質から出る放射線を浴びることを指します。

A.汚染の有無は、測定器(GMサーベイメータ)により確認します。

具体的には、避難指示が出た場合、避難経路上に「避難退域時検査」場所が設置されます。
「避難退域時検査」では、車、衣服等に放射性物質が付着(汚染)していないかを測定器で確認し、基準値を超える汚染が確認された場合は、簡易除染を行います。測定結果が基準値以下になった方に対しては、「通過証」が配られますので、そのまま避難所へ移動してください。簡易除染後も測定結果が基準値以下とならなかった場合は、医療機関等へ搬送して除染を行うこととなります。

A.被ばくの有無は、「被ばく線量評価」を行うことで確認します。
「被ばく線量評価」には、大きく2つ「生物学的線量評価」と「物理学的線量評価」があります。(以下参照)その結果により、診断や治療方針の決定、予後の評価が行われることとなります。

具体的には、「避難退域時検査」で有意な汚染が認められた人などを対象に、「甲状腺簡易測定」が実施されます。「甲状腺簡易測定」とは、測定器(NaI(TI)シンチレーションサーベイメータ)により、甲状腺中のヨウ素を測定することで、原子力災害発生からおおむね2~3週間以内に避難所等で行うと想定されています。

「生物学的線量評価」:鼻腔や口腔粘膜のスワブや血液、尿、嘔吐物等を調べることにより評価を行う。
「物理学的線量評価」:個人線量計やホールボディーカウンター、甲状腺簡易測定、による計測や、放射性物質等の情報解析により評価を行う。

放射線

A.医療分野では、X線撮影、臓器を画像化するCT、手術用手袋やガウン等の滅菌、がん治療に利用されています。農業分野では、病気に強い品種や栄養価値を高めた品種の開発などに役立っています。

A.「放射性物質」は、放射線を出す物質のことです。物質から放射線を出す強さ、能力のことを「放射能」といいます。「放射線」は放射性物質から出るエネルギーのことで、γ線、β線、α線などの種類があります。

A.放射線の単位には「Bq(ベクレル)」、「Gy(グレイ)」、「Sv(シーベルト)」があります。

「Bq(ベクレル)」は、放射性物質から出る放射能の強さを表します。
「Gy(グレイ)」は、放射線を受けた物質が吸収したエネルギー量を表します。
「Sv(シーベルト)」、放射線を受けた人体にどれだけ影響がでるかを表します。

1Sv(シーベルト)=1,000mSv(ミリシーベルト)=1,000,000μ㏜(マイクロシーベルト)
1mSv(ミリシーベルト)=1,000μ㏜(マイクロシーベルト)

A.人体への影響は、被ばくしてから体に症状が現れるまでの時期によって、「急性障害」と「晩発障害」に分けられ、被ばくして体にどのように症状が現れるかによって、「確定的影響」と「確率的影響」に分けられます。

「急性障害」
被ばくして数週間以内に現れます。
全身に短時間で1Gy以上の線量被ばくをした時に生じる急性放射線症(骨髄障害、消化管障害、神経障害)、
皮膚障害、脱毛、不妊 など

「晩発障害」
被ばくして数年から数十年後に生じます。
白内障、がん、白血病

「確定的影響」
ある線量(しきい値)以上の被ばくを受けた場合に現れます。症状の重さは、被ばくした放射線量によります。
急性放射線症、皮膚障害、脱毛、不妊、白内障 など

「確率的影響」
被ばくする線量の増加に伴って発症する確率が上がります。
がん、白血病

人体への影響